訪日外国人旅行者のお買い物事情

コラム

2016/06/30

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2016/06/30

訪日外国人旅行者のお買い物事情

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ここ数年、訪日外国人旅行者数が急激に伸びるなかで、あわせてその消費行動に注目が集まっています。特に中国人旅行者の活発な消費はいわゆる「爆買い」と言われ、その現象は2015年の新語・流行語大賞にも選ばれたほど。このコラムでは、観光庁が2016年4月に発表した「訪日外国人の消費動向(平成27年)」をもとにインバウンド消費の状況について、詳しく見てみたいと思います。

年々増加する外国人旅行者の支出額

2015年の訪日外国人旅行者が旅行にかけた支出は、一人当たり176,167円。東日本大震災後に一時期落ち込みましたが、再び増加に転じ、ここ3年間は前年比10%以上の伸び率を見せています。消費の内訳を見てみると、最も支出額が多いのは全体の4割を占める買い物代で73,662円。続いて、宿泊代の45,465円、飲食代の32,528 円と続きます。

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国別に見てみると、旅行支出が多い順に中国、台湾、韓国、香港、米国。観光客数でもトップ5に入るこれらの国や地域は、消費額でも全体の77.2%を占めます。なかでも断トツにお金を使うのが中国で、一人当たりの旅行支出額は283,842円。2014年の実績と比べてなんと2.5倍の増加率でした。
  
お金の使い方の傾向をみてみると、日本に近いアジア、特に東アジアの国々は限られた旅行予算のなかで買い物にかける割合が高く、平均10日以上滞在する欧米諸国では宿泊費の割合が高くなります。とはいっても、国ごとに細かな違いもあり、例えばフランス人はマンガやアニメのキャラクター商品の購入率が高く、イタリア人は和服や民芸品などの購入率が高いようです。お金の使い方にも国民性が現れているようで面白いものですね。

中国人の爆買い、3つの理由

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  • それでは、旅行支出が最も多い中国人旅行者の日本でのお金の使い方を見てみましょう。初めて日本を訪れる人、団体ツアーを利用する人が多い中国からの旅行者。買い物代にかける予算はおよそ16万円。旅行支出額のうち57%を占め、他の国や地域と比べても圧倒的に多い金額です。爆買いは家電を大量に買い込むイメージが強いですが、最近では、化粧品や香水、医薬品、健康グッズなどにも人気が集まっているようで、百貨店やドラッグストアでも中国人旅行者を見かける機会が増えています。

爆買いの要因として、「日本製品の品質に対しての絶大な信頼感」、「元高・円安の為替レートの影響」のほかに、「中国の税制による内外価格差」があげられます。輸入品は関税や贅沢品などにかかる税によって販売価格が上がってしまうので、中国で買うよりも日本で買って持ち帰ったほうが安く済みます。中国人旅行者が日本製品を大量に爆買いをするのは、買えば買うほど、税率の差の恩恵を受けられるからなのです。
  
しかし、爆買いが増加することは、中国国内の消費が低迷することにつながります。そのような状況に歯止めをかけるため中国政府は、2016年4月に海外で購入した商品を国内に持ち込む際にかかる関税を引き上げました。海外からの持ち込み商品への関税が高くなると、わざわざ日本で買い物をする理由が無くなってしまいます。
  
この関税の引き上げがどのように影響してくるのか現時点では未知数ですが、今後、初訪問からリピートへ、団体ツアーから個人旅行へトレンドが変化していくことを考えると、買い物ではなくレジャーや温泉など日本での体験自体を楽しんでもらうようなアクションがこれから必要になってくると思います。

SNSをフル活用する台湾からの旅行者

中国に次いで支出が多い台湾人旅行者の一人当たりの予算は141,620円。うち買い物代は59,500円です。地理的な要因もあって、訪日2回目以上のリピーターが多いのが台湾人旅行者の特徴。日本への観光に詳しいリピーター旅行者のブログやSNSを参考にショッピングを楽しむ傾向にあります。画像投稿アプリ「instagram」をみると、主要な日本の観光地はもちろんのこと、日本人でも知っている人がまだ少ない最新のショップや飲食店を訪れている台湾人旅行者を見つけることができます。
  
このように一口にインバウンド消費といっても、出身国や地域によってお金の使い方は異なります。訪日外国人旅行者という大きなくくりではなく、自分たちが取り込むべきターゲットをしっかりと絞り込むことが成功への近道ではないでしょうか。だからといって、ターゲット以外に対して何もしなくてもいいわけではありません。いつ、どこから訪れてくれるのかわからないのがインバウンド。いざというときに慌てないためにも、パンフレットやチラシなどの多言語対応は、できるだけ早い段階で準備しておきたいものですね。

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