【専門家コラム Vol.11】ビッグデータを活用する

コラム

2017/02/20

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2017/02/20

【専門家コラム Vol.11】ビッグデータを活用する

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執筆:村山慶輔/株式会社やまとごころ 代表取締役

最近、インバウンドでもビッグデータの活用は重要なテーマになっています。訪日外国人旅行者は、買物、宿泊、食、交通、娯楽、レジャーなど多種多様なことにお金を使いますが、それぞれの項目について様々な企業がビッグデータを保有しています。
  
流通業では国別の購買データを蓄積しているし、カード会社は訪日外国人旅行者のカードの利用情報を保有しています。ネット予約サイトも当然のことながら、顧客の予約状況を把握しています。もう少し幅広く行動履歴を蓄積し、データとして提供する企業もあります。
  
たとえば、訪日外国人旅行者向けの乗り換えアプリ。月間2~3万人のユーザーが日本国内でこのアプリを利用することで、乗換検索のログやアプリユーザーの動向データが蓄積されていき、訪日外国人旅行者の乗換検索の実態が手に取るようにわかります。他にも、SNSの解析データでは、TwitterやWeiboでのつぶやきを分析することで、訪日外国人旅行者の行動傾向や嗜好性を明確にすることができます。

観光庁の動態データに見る訪日外国人旅行者の傾向

今年1月に、観光庁が訪日外国人旅行者の観光動態データを発表しました。これは携帯電話の基地局情報、携帯電話のGPS情報、SNSでの投稿情報など、ICTを活用して収集したデータを分析したものです。
  
たとえば、基地局情報分析では、各都道府県の訪日外国人旅行者・日本旅行者の各集積比率を比較すると、外国人は東京と大阪に集中する傾向が高く、宿泊時間帯(午前4時台)では、日本人の約16%に対して外国人は約45%(東京と大阪の合計)に上ることがわかります。

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一方、GPS情報からは、訪日外国人旅行者の国内の流動や訪問傾向が見てとれます。たとえば北海道では、網走や稚内への訪問は5回以上のリピーターになると多いことがわかるのです。

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SNS投稿情報では、全国で「見る(ランドマーク・ゴールデンルート以外)」に関する単語が含まれるSNSを分析したところ、中国の1位は「河内藤園」、台湾は「太宰府天満宮」、香港は「足利フラワーパーク」、韓国は「南京町」、アメリカは「姫路城」と、各国の1位が異なりました。また、トップ5に複数上がったのは「姫路城」「上高地」「有馬温泉」「大雪山」「熊本城」のわずか5カ所となり、訪問地や興味の対象がばらけているのがわかります。

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大事なのは対策へつげること

現在ではこのように様々なビッグデータを入手することができます。しかし、多くの場合、ビッグデータは分析のためだけのデータになりがちです。それではあまり価値がありません。どうやって対策につなげていくかという視点を持たなければ、データはただの自己満足に終わってしまうでしょう。
  
ビッグデータをより活かすには、「分析をした上で具体的な対策につなげる」ことです。ぜひ、この点を意識しながら、インバウンドにおけるビッグデータの活用に目を向けていってください。

  • 村山慶輔株式会社やまとごころ 代表取締役

    兵庫県神戸市生まれ。ウィスコンシン大学マディソン校卒。大学卒業後、インドで半年間のインターンシップを経て、2000~06年、アクセンチュア勤務。退社後インバウンド観光に特化したB to Bサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、現在は企業・自治体向けに情報発信、教育・研修、コンサルティングなどを提供中。インバウンドビジネスの専門家として、国内外各種メディアへ出演の他、インバウンド関連諸団体の理事を多数兼任。近著に「インバウンドビジネス入門講座 第2版 訪日外国人観光攻略ガイド(翔泳社)」がある。

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