【専門家コラム Vol.2】訪日観光・こんなところにも外国人

コラム

2016/05/20

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2016/05/20

【専門家コラム Vol.2】訪日観光・こんなところにも外国人

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執筆:太田正隆/JTB総合研究所 主任研究員

日暮里駅へ降り立った、連休直前の土曜日昼である。大学で教えているゼミの学生と共に。近年、東京の下町散歩的な街で有名な谷中・根津・千駄木、通称「谷根千」、これで「やねせん」と読む。日本人にも大変な人気であるが、何故か外国人観光客にも人気である。ここを歩いてみた。

寛永寺

徳川家康、秀忠、家光公の三代にわたる将軍の帰依を受けた天海大僧正が1625年(寛永二年)に創建。15代将軍の徳川慶喜を始め、鳩山一郎、横山大観、渋沢栄一などの有名人が多数眠っている。谷中霊園であるが通称「谷中墓地」とも言われている。上野の台地上にあり上野の森の一角でもあるため、桜並木が美しいらしい。行った時には既に散っていたが、白人系の外国人、アジア系の外国人観光客が並木や墓地の写真を普通に撮っている。

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案内地図の多言語表記。やや奇異な感じがしたが、一昨年米国のボストンに行った際に体験した古い墓地ツアーを思い出した。建国の初期メンバーがメイフラワー号で上陸した地区であり、200年以上経過した古い墓地があり、古式ゆかしい衣装のガイド付きツアーもあって、すっかり観光地となっている。私も普通に写真を撮っていたではないか。

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谷中商店街

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路地裏のサイクリングも見かける。小さな美術館入口には、小さな竹の土台に丸ゴシック系のソフトな駐輪場表示。景観の溶け込んでいる、実にいい。

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夕やけだんだんで有名な谷中銀座入口では、到着間もないのかこれから帰国するのか不明な白人観光客が大きなトランクを持って記念撮影。セットが乱れているのが気になるのか、手櫛で決めている。

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商店街は人人人、食べる食べる食べる。当然、ゴミの問題があるので、ここでも多言語表記。

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歩き疲れた外国人の若者グループが、カフェの前にあるベンチで地図を見ながら谷根千を楽しんでいる。

こうした訪日外国人が観光地を選択する傾向は、一つはリピーターとして複数回日本へ来日して浅草、京都等のテッパン観光地の次の訪問先として。また、一方では若年層や旅慣れた観光客は、最初からディープな場所を選んで計画を立ててみたり、口コミサイトやバックパッカー向けの宿泊施設等で情報を仕入れて行動するパターンがある。どこの誰に聞いたか知らないが、日本人でもなかなか行かないようなところに外国人観光客がいるものである。

日本の文字と観光地

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  • 日本の古代は旧石器時代、縄文時代、弥生時代へと入り稲作文化が根付き狩猟生活から農耕生活へと移っていったと学校で学んだことを記憶している。弥生時代は紀元前300年程から紀元後300年頃と言われている。この時代に大陸から文字が輸入され日本に根付いたとされている。福岡の志賀島で発見された「金印」は紀元前100年頃のものだそうだ。明治初期に米国から来日し、大森貝塚を発見したエドワード・モースが縄の文様がはいった土器を発見し命名。この縄文式土器からとって「縄文時代」と言われるようになった。

    弥生時代は縄文式土器が発見されてから10年程度後に、作り方、焼き方、厚さなどが縄文式土器とは明らかに異なる方式で、技術的にも高く新しい時代の土器が日本人の手によって発見された。これを弥生式土器、そしてこの時代を弥生時代と呼ぶこととなった。

弥生時代は発見された地名から命名されている。現在の文京区弥生、根津の隣にある東大農学部の周辺である。縄文式土器は来日した米国人の発見から縄文時代、弥生式土器は谷根千となりの弥生町から発見され弥生時代、そして日本に文字が輸入され日本で文字が現れたのが弥生時代。今では、夕やけだんだんを含めて日本人にも訪日外国人にも人気の場所になっているのがちょっと不思議な空間である。

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  • 太田正隆JTB総合研究所 主任研究員

    インバウンド及びコンベンションの企画運営を始め、企業ミーティング、インセンティブ、トレードショー、イベント等に長年従事。各国のMICE事情、地域のMICE戦略策定、MICEビジネス構築、誘致計画、プロモーション計画の策定やマネージメント、マーケティング等、日本における数少ないMICEのエキスパート。

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