執筆:太田正隆/JTB総合研究所 主任研究員
自販機の最先端技術
巷にはITやICT、最近ではIoTといった言葉が流行っている。気が付くと便利な世の中になったものだ。
暑い日々が続くが、大変お世話になっている機械に自動販売機がある。夏でも冬でも冷たいのや温かい飲み物にありつける。昔はタバコを吸っていたので夜中でもどこでもタバコの自販機が設置されていてとても便利だった。
こうした自販機もIoTが搭載されている。日本で本格的な自販機が設置されてから約50年、いわゆる「しゃべる自販機」が出現し、挨拶やら季節等に合わせてしゃべるらしい。場所によっては、その地方の方言までしゃべるということだ。夜中に自販機と会話する姿を想像すると、個人的には便利を通り越してやや不気味な気もするが。
しゃべる家電は電子レンジとか冷蔵庫とか以前からあり、自宅の冷蔵庫に「扉が開いてます!」なんてお姉さんの声で言われて、思わず「すみません」と返事。最近では、食材を言うと料理の提案までするそうである。
自販機の多言語表記
家のなかはともかく、外に設置されている自販機の中にはおしゃべりはしないが、案外便利な機能が現れ始めた。外国人向けの「自販機での商品の買い方」と「これらの多言語化」である。
海外で電車の切符を購入する時にコインを用意するが、その際結構困るのが行先や価格がよくわからないことと、なんといっても手持ちのコインがいったいいくらなのかがわからない。掌に広げて思案していると、国によっては交通ボランティアのような係の人が近づいてきて、適切にアドバイスをくれたりする。
日本にはおびただしい数の自販機があり、その近くに誰もいないことが多い。ぽつんと寂しそうに佇んでいることもある。そんな時、きっと困るだろうなと思っていたら、いくつかの自販機にはコインの種類、商品選択、購入の方法までイラストや写真でわかりやすく解説、しかも多言語。さらには15カ国語の表記まであり大変心強い思いをした。
しゃべる自販機もいいと思うが言葉には限界がある。「目は口ほどにモノを言う」がごとく、テキストとイラスト(文字と図形)、QRコードを組合せ、どっしりと構え飲めとばかりに「モノ言う自販機」には脱帽。スマートフォンで写真のQRコードを読み込むと、商品情報について15言語でご確認することができる。
自販機は街のインフラ・地域社会との共生
最近の自販機は、節電対策型、災害支援型、マルチマネー型、環境配慮型など多くの機能があることと、自販機業界では社会貢献、環境問題への対応、安全対策、未成年者対策に力を入れているそうである。
また、社会貢献への取組みとして、自販機に対する住所表示ステッカーの貼付、災害対応自販機の普及促進、自販機の景観調和、ユニバーサルデザイン自販機の普及促進なども行っている。
さらには、道路情報、地域情報、イベント情報、防犯情報等の地域情報の提供、売上の一部を社会活動、市民活動、スポーツ振興地域活動への支援に提供するなど多岐に渡っている。
実は一番驚いたのは、自販機の設置数は米国が日本を上回っていたことである。
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太田正隆JTB総合研究所 主任研究員
インバウンド及びコンベンションの企画運営を始め、企業ミーティング、インセンティブ、トレードショー、イベント等に長年従事。各国のMICE事情、地域のMICE戦略策定、MICEビジネス構築、誘致計画、プロモーション計画の策定やマネージメント、マーケティング等、日本における数少ないMICEのエキスパート。