【専門家コラム Vol.14】佐賀がタイからの観光客を掴んでいる理由 ~フィルムコミッション活用事例~

コラム

2017/05/22

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2017/05/22

【専門家コラム Vol.14】佐賀がタイからの観光客を掴んでいる理由 ~フィルムコミッション活用事例~

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執筆:やまとごころ編集部

一生行かない都道府県1位「佐賀」が外国人を惹きつける!?

「あなたが一生行くことはないだろうと思う都道府県ランキング1位 佐賀県」
  
これは、とある学生向け就職情報サイトが2015年に行ったアンケート結果だ。
  
ところが、佐賀県の外国人宿泊者数は、勢いよく伸びている。それまでは平均して約36,000人から50,000人程度で推移していたのが、2014年90,940人、2015年199,950人、2016年は246,160人と非常に高い伸びを見せている。
  
特にタイからの観光客の伸びが目覚ましい。2013年のタイからの観光客の宿泊者数はわずか370人だったが、2014年1,540人、2015年4,590人、2016年は5,820人と推移している。では、なぜここまでタイからの観光客数が大幅に増えているのか。それは県が主体となって取り組む映画やドラマのロケ誘致によるところが大きい。

外国人観光客誘致の一翼を担ったフィルムコミッション

佐賀県では、2005年より観光課の一つの係として、フィルムコミッションが設置された。当初は国内の映画、ドラマを中心とした誘致に取り組んでいたが、2011年より海外作品の誘致にも着手。当初は韓国をターゲットとしていたが、2013年に、タイの訪日ビザ要件の緩和というニュースとともに、今後訪日するタイ人が増えるだろうという情報が入ってきた。
  
そのような中で、当時の担当者が「タイをターゲットとした誘致活動を行いたい」と手を挙げたのだ。タイの経済状況、映画やTV業界の動向、親日度、佐賀への旅行経路、日本の他エリアにおけるタイの誘致活動の状況など、一生懸命に調べ上げた担当者の熱い思いにより、一度頑張ってみようと、タイのドラマ、映画の誘致活動を始めた。

タイの映画誘致を通じて一挙に”SAGA”の知名度アップ

映画誘致の最初の実績は、タイ映画大御所であるノンスィー・ニミプット監督によるラブストーリー「Time Line」(タイで2014年公開)。作品の中では、佐賀県唐津市で11月に開催される祭り「からつくんち」や、伊万里焼の大川内山などが美しく描かれた。また、主演女優が、タイのアカデミー賞ともいわれる「スパンナホン賞」の主演女優賞を受賞し、タイで一気に話題になった。

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「Time Line」主演女優のジャリンポーン・ジュンキアットさん

さらに、タイで2015年2月にサービスが開始されたLINEテレビの第一作目として放映されたドラマ「STAY」は、「私が恋した”SAGA”」というテーマのもと、作品の95%が佐賀で撮影されており、ここでも”SAGA”の知名度があがった。
  
ドラマは、各回1時間計4話の連続ドラマで、タイでは延べ1000万を超えるアクセスがあったそうだ。あまりの好評ぶりに、その後2回、タイの地上波で放映されたほどだ。

映画誘致をきっかけとした佐賀県の取り組み

これらの映画やドラマのヒットをきっかけに、タイから多くの観光客が訪れるようになったのだが、一時的なブームで終わらせるのではなく、リピーター化と、その人たちのクチコミによる新たな訪問者の誘致が大事になってくる。そのため、県は(1)訪れるべき価値の創出、(2)おもてなし環境の整備、(3)情報発信の3つを観光戦略の軸として定めた。
  
これら3つの軸をもとに、観光アプリと多言語コールセンターを合わせたサービス、「DOGAN SHI★TA★TO?(どがんしたと)」を開始し、撮影されたタイの映画やドラマのロケ地を巡ることができるようにしたほか、タイの配給会社と交渉し、地元のテレビ局の協力のもと、「STAY」の日本放映を実現、地元の人が見る機会を設けたり、タイの有名雑誌を招聘しロケ地を中心に佐賀の魅力を記事化してもらうなど、様々な取り組みを行っている。

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LINE TVの第1弾作品となった「STAY」のポスター

最も大切なことは、外国人視点での地元の魅力に気がつくこと

「佐賀市の嘉瀬川では、毎年秋に河川敷で熱気球の大会が開催される。それ以外の時は何の変哲もない河原だと地元の人は思っていた。しかし、映画『STAY』では、この場所をとても美しく描いており、このドラマを通して改めてその魅力に気づかされた。」
  
これは、タイで行われた単独プロモーションでの山口知事のスピーチの中の一節である。何よりもまず、地元の人が地元の魅力に気づくこと。インバウンドにおいては、外国人の視点で地元の魅力に気づくこと。そこから全てが始まることを、佐賀の取り組みが教えてくれる。

取材協力:佐賀県 文化・スポーツ交流局観光課

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  • やまとごころ編集部

    株式会社やまとごころ メディア・コンテンツ事業部
    2007年より、インバウンドB to B 支援のための日本最大級のポータルサイト「やまとごころ.jp」を運営。「日本のインバウンドを熱くする」をモットーに、長年にわたりインバウンド業界に携わり続けた圧倒的な情報量と知見を活かし、インバウンド関連の最新情報を、日本全国のインバウンドに携わる企業・自治体の皆様に向けて発信し続けている。
      
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    http://www.yamatogokoro.jp/

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