【専門家コラム Vol.36】地域活性の核、商店街でインバウンド誘致に取り組むゲストハウス「なごのや」

コラム

2019/03/15

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2019/03/15

【専門家コラム Vol.36】地域活性の核、商店街でインバウンド誘致に取り組むゲストハウス「なごのや」

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執筆:やまとごころ編集部

高層ビルが立ち並ぶ名古屋駅から徒歩圏内という立地にありながら、昭和の趣を残す円頓寺商店街は、名古屋で最も古い商店街のひとつとして知られている。他の多くの商店街と同様に、一時は衰退の兆しを見せていたが、現在では昔ながらの店と感度の高い店がほどよいバランスで混在し、イベント開催時には大勢の若者が押し寄せるほど活気を取り戻している。そんな円頓寺商店街の一角に、外国人観光客を誘致するゲストハウス「なごのや」が登場したのは2015年のこと。以来、地元の人々と外国人旅行者が集うプラットフォームとして、商店街活性化の一翼を担う存在となっている。

老舗喫茶店を改装し、インバウンドを取り込むゲストハウスに

2013年に名古屋市内で旅行会社「ツーリズムデザイナーズ」を立ち上げ、着地型ツアーを中心とした旅行業を営んでいた田尾大介さんは、2015年になごのや(2018年3月までは「西アサヒ」の名で運営)を設立した。もともとは、円頓寺商店街の活性化に奔走し、再生プロジェクト「ナゴノダナバンク」のリーダーも務める建築家の市原正人さんから提案を受け、田尾さんがもともと温めていたビジネスプランをここで再現しようと決意したことがきっかけとなった。この場所は以前、昭和7年創業の老舗喫茶店「西アサヒ」として地元の人に親しまれてきたが、2013年に廃業し、空き家となっていたのだ。

地域の人との交流こそが、外国人旅行者の思い出になる

1階はレセプション兼地域の人が集う喫茶店として、2階は外国人旅行者やゲストハウス好きの若い日本人旅行者などの宿泊所としてスタートしたなごのやは、今では商店街で最も人が集まる場所のひとつになった。全15床のゲストハウスの稼働率は7〜8割。外国人宿泊者がそのうちの半数を占め、市場別では台湾からの顧客が最も多い。次いで香港、中国が多く、欧米からのゲストも外国人宿泊者の約3割を占める。
 
ゲストハウス事業は、商店街活性化の補助金制度を活用したこともあり、赤字にはなっていないものの、ビジネスとして大きな利益をもたらすものでもない。それでも続けているのは、田尾さんが「地元の人との交流こそが、旅先での一番の思い出になる」と信じているからだ。外国人旅行者を集客できたとしても、地元の人たちがそれを歓迎しないのであれば意味がない。だからこそ「なごのやだけで完結してしまわないよう気を配っている」と田尾さんは言う。

「朝食付き」ではなく、あえて素泊まりをすすめる理由

その表れとして、なごのやでは1階に喫茶店があるにもかかわらず、朝食と宿泊を完全に切り離している。なごのやでの食事は可能だが、商店街の別の飲食店で食事をとったり、食べ歩きをしたり、地元の人と酒を酌み交わしたりしてほしいからだ。最初は迷惑をかけていないかと心配で様子を見に行ったり、「うちの外国人のお客さんが行ったみたいですが、大丈夫でしたか?」と声をかけに行ったりもした。しかし、そんな田尾さんの心配をよそに、お店の人や常連客は、言葉が通じなくても外国人のお客さんと積極的に交流していたという。商店街で暮らしてきた地元の人たちは、ほとんどが根っからの商売人。売り上げが上がるのならば、誰もが歓迎されるのだ。

ツーリズムデザイナーズは昨年、経済産業省の「ブランドランドジャパン事業」の一環で、円頓寺商店街の体験ツアーを造成した。訪日外国人向けの着地型観光ツアーの企画・販売を手がけてきたノウハウを活用し、地元の人と触れ合いながら、下町感の残る商店街の暮らしと遊びを体験できるプログラムとなっている。また、2016年に円頓寺商店街で誕生したカブキカフェ「ナゴヤ座」での演劇鑑賞ツアーも企画し、両ツアーともにトリップアドバイザー経由で販売している。「今後は宿とツアープログラムで、世界中のお客さんを円頓寺商店街に呼びたい」という田尾さんの言葉からは、インバウンド誘致への揺るぎない意志を見て取ることができる。

取材協力:なごのや

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  • やまとごころ編集部

    株式会社やまとごころ メディア・コンテンツ事業部
    2007年より、インバウンドB to B 支援のための日本最大級のポータルサイト「やまとごころ.jp」を運営。「日本のインバウンドを熱くする」をモットーに、長年にわたりインバウンド業界に携わり続けた圧倒的な情報量と知見を活かし、インバウンド関連の最新情報を、日本全国のインバウンドに携わる企業・自治体の皆様に向けて発信し続けている。
      
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