【専門家コラム Vol.19】訪日客の傾向に変化が見えた

コラム

2017/10/20

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2017/10/20

【専門家コラム Vol.19】訪日客の傾向に変化が見えた

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執筆:村山慶輔/株式会社やまとごころ 代表取締役

昨年より45日早く2,000万人突破

今年の訪日客数は9月15日の時点で2,000万人を超えました。初めて2,000万人を突破した昨年よりも45日早い突破で、もちろん過去最速です。夏休み期間の8月には、中国から単月で過去最高の80万人超えを記録したのをはじめ、全体でも前年同月比21%増の247万人と大きく伸びました。このままだと、最終的に今年は2,800~2,900万人で着地しそうです。

韓国人客は4割増し

今年ここまでで目立つのが、韓国人旅行者の増加です。1~8月の合計は前年度比41.7%の466万人。1位の中国は平均伸び率が8.9%と低かったため、その差はわずか22万人ほどしかありません。もともと韓国は2013年までは訪日客数1位で、2014年に台湾に、2015年には中国に1位を譲り、以来ずっと2位。昨年は熊本地震の影響で韓国から近い九州を訪問する韓国人が減ったこともありました。ただ、そんな中でも常に前年を上回る伸びを見せてきており、今年は特にその伸びが顕著となっています。

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伸びた理由はいくつかありますが、まずは中韓関係の悪化で中国を避け日本を旅行先として選ぶ人が増えたこと。LCCやクルーズの増加で国内旅行と比べても「コスパ」が良くなっていること。距離が近いので週末に2泊3日で簡単に行けるということなどが大きいようです。今年は9月30日から秋夕(旧盆)と振替休日などで10連休だった韓国。東京近郊の箱根なども韓国からのお客さんが大勢いましたから、さらに数字が伸びるのは間違いありません。

クルーズ船の寄港も増加を後押し

上にも書きましたが、クルーズ船の増加は、訪日客数を押し上げる大きな要素です。例えば今年7月に沖縄に寄港したクルーズ船は前年同月から8割増しの71回。1~7月までの合計は310回で、年間でも過去最高の昨年を更新する502回の寄港が見込まれています。しかも、これは沖縄だけの現象ではなく、九州、四国などでもクルーズ船は増加する一方です。
  
大型のクルーズ船ともなると乗客だけで3,000人前後、乗組員も1,000人を超え、大きな経済効果が生まれていると言われます。現に9月に外国の大型クルーズ客船が初寄港した敦賀では、豪州や米国からの外国人客2,000人を含む約2,700人の乗客によって、土産代や飲食費、オプショナルツアー料金などで4,000万円の経済効果が地元にあったとのことです。

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英国人が消費額ナンバーワン

もう一つ注目したいのは、今年4-6月の訪日外国人消費動向調査の旅行支出額で英国が25万1,000円、イタリアが23万3,000円となり、中国の22万5,000円を上回ったことです。これによって中国の爆買いの終焉を報じる向きもありましたが、欧州からの訪問者は滞在日数が長いだけ宿泊料金にかかる費用が大きく、買い物に関してはやはりまだ中国がダントツで多くなっています。例えば、英国人の場合、宿泊、飲食、交通費、娯楽の合計が全体の87%を占めますが、買い物は13%。逆に、中国人は買い物代が58%を占めているので、中国人の購買パワーは健在です。

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上の図版を見ても一目瞭然ですが、旅行支出が多いのは欧米豪からの訪日客です。つい先日、英国のポストオフィスが発表したレポートでは、世界で最もコスパのいい街に東京が選ばれており、英国からの日本旅行の予約は前年度より2割以上も増えているとのこと。2019年のラグビーワールドカップには、キャンピングカーを借りて開催都市を巡りたいという英国人の声も聞こえます。政府の掲げる2020年の訪日客消費額の目標8兆円を実現するためには、1人当たりの消費額の大きい、これら欧米豪からの訪日客誘致をさらに積極的に進めていきたいところです。

  • 村山慶輔株式会社やまとごころ 代表取締役

    兵庫県神戸市生まれ。ウィスコンシン大学マディソン校卒。大学卒業後、インドで半年間のインターンシップを経て、2000~06年、アクセンチュア勤務。退社後インバウンド観光に特化したB to Bサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、現在は企業・自治体向けに情報発信、教育・研修、コンサルティングなどを提供中。インバウンドビジネスの専門家として、国内外各種メディアへ出演の他、インバウンド関連諸団体の理事を多数兼任。著書に「インバウンドビジネス入門講座」「インバウンドビジネス集客講座」(いずれも翔泳社)がある。

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