インバウンドを取り巻く日本の状況(前編)

コラム

2016/03/25

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2016/03/25

インバウンドを取り巻く日本の状況(前編)

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新聞やテレビなどニュースで目にすることが多くなった「インバウンド」という言葉。インバウンドとは「外から中に入ってくる」という意味で、訪日外国人旅行者のことを指す観光業界の言葉です。

日本の観光といえば、これまで日本人の国内旅行や海外旅行への取り組みに力を入れてきました。2000年には1,782万人と史上最高の海外旅行者数を記録しましたが、それに比べ、外国人旅行者の受け入れ数は、1/4程度の477万人。このようなアンバランスな状態が続けば、日本は海外旅行の訪問先として魅力がない国と思われてしまいます。そこで、日本を訪れる外国人旅行者を増やそうと2003年から始まったのが「ビジット・ジャパン・キャンペーン」です。当初は「2010年に訪日外国人を1,000万人にする」という目標でしたが、実際に1,000万人を達成したのは2013年のこと。2012年3月に改定された観光立国推進基本計画では2020年初めまでに2,500万人の訪日を目標として掲げています。

このコラムでは、ビジット・ジャパン・キャンペーンをキッカケとしてはじまった日本のインバウンドへの取り組みについて、現在の状況を探ります。

アジアからの訪日旅行者が増加中

2015 年の訪日外国人旅行者数は約1,974万人。前年と比べて47.1%増で、1970年以来、45年ぶりに外国人旅行者数が出国日本人数を上回りました。

なかでも全体の1/4を占めるのが中国からの旅行者で、499万人が昨年日本を訪れました。そして、中国以外のアジア圏からの旅行者も増えています。韓国、台湾、香港はもちろんのこと、タイやシンガポール、マレーシアなの東南アジアの伸び率も前年比20%という成長ぶり。東南アジアからの旅行者が増えている一因には、ビザ取得要件の緩和があげられます。

さて、海外からの旅行者のみなさんが日本を訪れる目的はなんでしょうか?

訪日外国人の旅行消費額を比べてみると、買い物にかける金額が増加しています。2015年のデータでは、一人あたりの旅行支出額176,168円。そのうち、買い物代は73,663円でした。なかでも特に顕著なのが、中国人の「爆買い」と呼ばれる消費行動です。中国人の旅行にかける予算がもともと多いこともありますが、日本での買い物代は、なんと161,974円でした。

お金の使い方の傾向をみてみると、アジアの国々の旅行者は、限られた旅行予算のなかで、買い物にかける割合が高く、欧米諸国では、日本の歴史や伝統文化を体験するために長期間滞在するせいか、宿泊費にお金をかけるようです。

情報収集はインターネットとスマートフォンで

外国人旅行者が日本を訪れたとき、どのような方法で旅先の情報を集めるかといえば、スマートフォンは欠かせません。ですが、日本を訪れる外国人が増えているなか、英語をはじめとする外国語への対応は十分だとはいえない状況です。

そんな時、常に持ち歩くスマートフォンにガイドアプリがあればこれほど心強いものはないでしょう。翻訳アプリがあれば、外国語が話せない人ともコミュニケーションをとることができます。外国人旅行者が旅先で知りたい情報にアクセスできるようにするためには、インターネット環境の整備がこれからさらに望まれます。

これは大都市部に限ったことではありません。今後、日本を二度三度と訪れるリピーターが増えていけば、団体旅行から個人旅行へ、大都市部から地方へと、外国人旅行者の旅のスタイルは変化していきます。そして、旅行者は、さまざまな情報を集めるためにスマートフォンを使ってインターネットにアクセスします。外国人旅行者の増加にあわせて、訪日外国人向けの無線LANサービスはもちろんのこと、携帯型ルーターやプリペイド型スマートフォンの貸出や販売などのサービスがこれからもっと増えてくることでしょう。

求められる多言語での情報提供

外国人旅行者が快適に安心して日本国内を旅するためには、インターネット環境の整備だけでは足りません。あわせて、さまざまな言語での情報提供が必要となります。それは観光案内所や行政機関、空港や駅などの公共の交通機関だけが行えばよいというものではありません。

わたしたちが海外を旅行するとき、「日本語メニュー、あります」とあるだけでホッと安心するように、海外旅行者のみなさんにとっても母国語やなじみのある言語の案内があるだけで心強いものです。英語はもちろんのこと、最近のアジア圏からの旅行者の増加を考えれば、中国語や韓国語などの表記もこれから必要となってきます。

「うちには外国人旅行者は来ないだろうから、外国語の説明はいらないかな」と考えていても、年々増え続ける外国人旅行者は、望むと望まざるにかかわらず、日本のさまざまな場所を訪れます。今はまだインバウンドに興味がなくとも、対応しなければならない状況がだんだんと近づいています。

◆次回「インバウンドを取り巻く日本の状況(後編)」に続きます。
お楽しみに!!

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